モノを溜め込まずに入られない:強迫性障害

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強迫性障害という言葉をを知らない人でも、潔癖症はご存知だと思います。潔癖症とは、「人が触れたものに嫌悪感がある」「ものに触れたあと手を洗わないと気がすまない」、「汚れやホコリを極度に気にする」などの症状があります。潔癖症も強迫性障害の一つで、不潔恐怖症とも呼ばれます。

 

片付けに関しても強迫性障害はあります。ここでは、片付けに関する強迫性障害についてみていきます。

 

溜め込み障害

 

溜め込み障害とは、「モノを集めずにはいられない」「捨てることに恐怖を感じる」「整理整頓ができない」などがあげられます。そして、その障害のために苦痛を感じていることが溜め込み障害です。次のような症状が見られます。

 

物を集めずにはいられない

 

溜め込み障害の方は、物を集める行為自体が習慣になっていることが多いようです。習慣というのは怖いもので、一度集める習慣がついてしまうとなかなかやめられません。

 

本人も無意味であることは理解している場合が多いです。でもやめられないのです。逆に収集する行為をしなかったり、やめようとしたりしても、「このチャンスを逃したら二度と手に入らないかもしれない」という恐怖心から収集してしまいます。

 

捨てることに恐怖を感じる

 

例えば、「大切な思い出の品を自分の確認不足で捨ててしまったら……」このような心理から捨てる行為を恐れてしまいます。まだ使えるものを捨てる罪悪感や、二度と手に入らないかもしれないものを手放すことが怖いと感じてしまいます。捨てるという行為に恐怖や苦痛を感じてしまうのです。

 

整理整頓ができない

 

当然の結果として整理整頓はできません。これは本人の片付け能力とは関係なく、モノが多すぎて片付けしようにも片づけができないのです。以前、強迫性障害と思われるお客様の事例を紹介します。

 

ある女性に依頼をいただき片付けにいったときの話です。部屋を見てみると、一面カラフルな服で占領されています。そのおびただしい量の服と不要品で床は見えない状態です。

 

その量はベッドよりも高く積み上がっており、壁に大量の洋服がかけてあるので壁も見えません。お話によると、その方は自分の体型にとてもコンプレックスを感じていらっしゃるようで、「一般的な店では自分に合うサイズのものが売っていない」と話してくださいました。

 

「このような体型なので、(サイズが)あう服があると全て買ってしまうのです」

 

「これだけたくさんあっても着ないことわかってはいるのです。でも、あるうちに買わないと二度と買えないのではないかと考えてしまいつい買ってしまいます」

 

全部買うというお話ですが、「いくらなんでも全部買うことはできないだろう」と思っていました。ただ、実際に部屋を片付け始めて驚きました。一つの服につき色違いが3〜4着ほどでてきます。私の認識だと、衣類関係の色違いは3〜4色です。その色違いが(おそらく)全てあります。

 

アウター、インナー、パンツ、スーツに至るまで全てです。これにはさすがに驚きました。しかも、その膨大な量の衣類の大半は袋に入ったままです。

 

「服がお好きなのですね」と質問したところ、その方は次のように話してくれました。

 

「いえ、そういうわけじゃないのです。以前母から『あなたは体型が悪いから、サイズが合う服あったら全部買っておきなさい。そのうち着るものがなくなるわよ』といわれたのが心に残っており、買わないと気がすまなくなりました」

 

「それから服を見かけるたびに購入するようになってしまいました。服を捨てるのも怖いです」

 

このように話してくださいました。母親からするとアドバイスのつもりが、本人にはトラウマ(心の傷)になっているようでした。

 

私は医者ではありませんので、この方が溜め込み障害かは判断できません。しかし、このような小さなきっかけから「買わなければいけない」「捨てることが怖い」といった脅迫観念を持っておられました。そして、そのことで生活に支障が出ているばかりか、精神的にもつらそうにしていらっしゃったのが印象的でした。

 

溜め込み症

 

溜め込み障害と似ていますが、別物です。同じ溜め込みでも苦痛を伴わない溜め込みは、強迫性障害にはなりません。

 

例えば、趣味で集めたフィギアがあります。片付けの際フィギアは良く出てくるのですが、ある現場では所狭しと並べてあるフィギアがありました。その部屋は、もはや生活空間を圧迫し普通の生活を送るのに支障をきたしていました。

 

しかし、その方にとってフィギアは大切な宝物であり、決してゴミではありません。生活に支障をきたしていても、それを本人が苦痛と思わなければ強迫性障害ではありません。

 

強迫性障害と片付け

 

まずは自身が強迫性障害を認めることが大切です。強迫性障害の方の傾向として、「小さいことにこだわっている自分」「普通とは違う自分」を恥じてしまい、誰にも相談できずに一人で悩んでいる方が多いようです。

 

今の自分を認め、医師に相談することから始めてください。そして、医師の指導の下、少しずつ片付けができるようになっていけばよいのです。周りの人から見ると些細なことでも、強迫性障害の方にとっては重要なことです。このことを周囲の人が理解しなければなりません。


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