親孝行することで、実家の片付けがうまくいく理由:返報性の法則
「挨拶には挨拶で返したくなる」、「プレゼントにはプレゼントで返したくなる」、「親切には親切で返したくなる」などといった経験は誰にでもあると思います。
人は誰かに施しを受けると、同じように恩を返したいと感じます。この心理を「返報性の法則(返報性の原理)」といい、人間が持つ習性のひとつです。
この返報性の法則を理解することができれば、親の説得はとても簡単になります。
人は恩返しをしたい生き物
返報性の法則は、身近なところで使われています。例えば、スーパーの試食コーナーでは、売り物が無料で配られています。ここで試食をしたあと、何も買わずに立ち去ることに気が引けてしまう人は多いと思います。
これは返報性の法則により、「タダで試食させてもらったから、買わないと悪い」と感じてしまうからです。人は、「施しを受けたまま」の状態に、無意識に違和感を抱きます。その違和感を拭うために、「相手にお返しをしたい」と思うのです。
返報性の法則について、私が実際に経験した例を挙げてみます。私がまだメガネ店で働いているとき、ある老夫婦がメガネを買いに来店されました。このお客様のご希望は、「今のメガネより、もっとよく見えるメガネが欲しい」というものでした。
しかし、実際に目を測ってみると、今のめがね以上の視力を出すことは不可能なことがわかりました。そこで正直に、「今のメガネの度数がベストなので、今は新調しないほうが良い」とご提案しました。
すると、お客様からこの提案に驚かれた反面、とても喜ばれました。このとき対応したお客様からは、「これまで売ることしか考えていない眼鏡屋ばかりだったが、このように親切に対応してくれたところは初めてだ」と、大変ありがたい言葉をいただきました。
その日は何事もなく帰られましたが、次の日、その老夫婦が再び来店されました。そして今度は、「同じ度数でもかまわないのでメガネを作って欲しい」と希望されました。
私は、見え方が変わらないことを再度説明しましたが、お客様は「それでもかまわない。あなたからメガネを買いたいのです」とおっしゃってくださいました。
当時の私は眼鏡屋のプロである以上、お客様にメガネを購入していただくことが望みです。その望みを叶えるためには、お客様にとって最も喜ばれる提案をしなければなりません。今回は、これがたまたま「今は買わないほうが良い」という提案になっただけでした。
しかし、このことが感動を呼び、後に「お客様にメガネを購入してもらう」という私の望みが叶ったわけです。このように、相手が思っている以上の感動を与えることができれば、返報性の法則は強く働きます。
ただ、親を説得するために大きな感動を与える必要はありません。例えば、日ごろなかなか実家に顔を出していないようであれば、実家に帰る回数を増やすだけでもかまいません。その他、いつも親がやってくれている家事を、代わりにやってあげるだけでもいいと思います。
要は、日ごろから小さな親孝行をすることが大切なのです。良好な親子関係が構築できると、こちらが何かをお願いしたとしても、「いつも助けてもらっているから、お前の思うとおりにしていいよ」と言われる可能性が高くなります。
つまり、「いつも助けてくれる人」と、「何もしてくれない人」では、「どちらの頼みごとを聞いてあげたくなるか」ということを意識する必要があるのです。
見返りを求めると、説得は失敗する
これまで説明してきたように、人は恩を感じると恩を返したくなる生き物です。しかし、必ず見返りが返ってくるわけではありません。返報性の法則は、助け合いの精神であり、見返りを求めるものではありません。そのため、望んだ結果が得られないことも考えられます。
しかし、あなたが望む結果にならなかったとしても、そのことを気にする必要はありません。今回はダメだったかもしれませんが、月日の流れと共に相手の考えが変わってくる可能性があるからです。
このときに、良好な親子関係が構築できていれば、実家の片付けをスムーズに進めることができます。
返報性の法則について、ひとつ注意しなければならないことがあります。それは、恩着せがましくなってしまわないことです。「これだけやってあげたのだから、私のお願いを聞いてよ」というのは、見返りを求める行為であり、お願いを聞いてもらう上で逆効果です。
さらに、恩着せがましさが相手に伝わってしまうと、その後いくら相手に尽くしたとしても、「何か裏があるのではないか」と思われてしまいます。
このことに注意することができれば、返報性の法則は相手を説得する上で、素晴らしい効果を期待することができます。
このように、親を説得して実家の片付けをしたい場合には、返報性の法則を応用し、親に対して親切に対応することが重要です。これにより、親がこちらの意見を受け入れてくれ、実家の片付けに応じてくれる可能性が高くなります。
またこのときに、見返りを求めて親切にすると、相手に不信感を抱かれ、説得が難しくなってしまいます。そうならないためにも、見返りを求ないように親に優しくし、親に納得してもらえるようにしましょう。
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