親が生前整理を行うきっかけを作る:ドア・イン・ザ・フェイス
まだ生きている間に自分で身辺整理をすることを、「生前整理」といいます。しかし実際のところ、弊社にご相談があるのは、ご自身で身辺整理をする方よりもその家族の方が困って相談してくるケースが圧倒的に多いです。
生前整理に伴って実家の片付けをするにあたり、みなさんが最も頭を抱えていることがあります。それは、生前整理を行う「きっかけ」を作ることです。
単にお願いしただけでは、親は生前整理を受け入れてくれないため、「どのように切り出せばよいのかわからない」という声を聞きます。
それでは、どのようなことに注意しながら説得すると、生前整理を行うきっかけになるでしょうか。そこでここでは、親を説得するために効果的な、「ドア・イン・ザ・フェイス」というテクニックについて解説していきます。
生前整理では、きっかけ作りが最重要
それでは、ドア・イン・ザ・フェイスとはどのようなものでしょうか。それは、最初に大きな要求をしていったん断らせておいて、後の小さな要求を承諾させるテクニックのことになります。
ドア・イン・ザ・フェイスをお金の貸し借りに例えると、次のような形になります。
A君「10万円貸してほしい」
B君「いきなりそれは無理だよ」
A君「それなら、5000円あればとりあえず助かるから、5000円だけでもお願いできないかな?」
B君「うーん、それくらいならいいよ」
このように、最初は大きめの金額を提示してわざと断られ、その次に本来自分が借りたかった金額を伝えます。すると、そのまま自分の要求を伝えるよりも、依頼に答えてくれる可能性が高くなります。
人は、一度提案を拒否した相手に譲歩されると、「なんだか悪い」と感じてしまいます。このときの心理状況により、大きな要求の後の小さなお願いを受け入れてもらいやすくなります。
このドア・イン・ザ・フェイスを生前整理に応用すると、次のようになります。
あなた「お母さんが元気なうちに、家の不要品を全て処分させて」
親「今は必要ない」
あなた「それなら、ダンボール箱一個だけでも片付けてさせて欲しい」
親「まあ、それくらいならいいよ」
これは、「家の不要品全ての処分」から「ダンボール一個分の処分」に要求が変わったことにより、「ダンボール一個くらいならいいか」と気持ちが変化したためです。
そして、段ボール箱を一つ片付けたことをきっかけとして、「ついでに隣にある古い雑誌も処分しておこうか?」といった形で、次のステップに進むことが可能になります。
親の説得で失敗する多くの人は、「不要品をすべて処分する」というゴールしか見えていません。そのため、大きな要求だけを提案してしまうため、親に断られてしまうのです。
そうではなく、親の説得で重要なのは、「まずはダンボール1個分だけ処分する」という考え方をする必要があります。これをきっかけにして、生前整理を行うのです。そのきっかけ作りに効果的なテクニックが、先ほど述べたドア・イン・ザ・フェイスです。
このように、ドア・イン・ザ・フェイスは、生前整理を行うにあたって、「きっかけ作り」に役立つテクニックです。このドア・イン・ザ・フェイスを利用し、親御さんの生前整理に役立ててください。
「ドア・イン・ザ・フェイス」の注意点
ドア・イン・ザ・フェイスは、最初に大きなお願い事を断らせることで、後の小さなお願い事を受け入れてもらうためのテクニックです。しかし、明らかにおかしいレベルの要求は、相手を怒らせる可能性があるので避けなければなりません。
例えば、「お父さんのモノは全部捨てもらえる?」といったように、あまりにも非現実的なお願いをしてしまうと、父親から「どう考えてもおかしい」と思われて、不信感を抱かれます。
このように、明らかにおかしいレベルの要求は、相手を不快にさせるばかりか、その後の説得にも悪影響を与えてしまいます。したがって、ドア・イン・ザ・フェイスのテクニックを利用して親を説得するには、相手との信頼関係や、相手の人間性を考慮して行う必要があります。
「ドア・イン・ザ・フェイス」を悪用する、悪徳業者の存在
これまで解説してきたように、ドア・イン・ザ・フェイスは説得相手から承認を得るために、非常に有効なテクニックです。しかし、このドア・イン・ザ・フェイスを利用し、法外な料金を請求するといった、悪質な業者がいることも事実です。
一例として、弊社に片付けのご相談がある場合、相見積りを希望される方がいらっしゃいます。相見積りとは、複数の業者から見積りの料金を提示してもらい、その中から納得のいく業者に依頼する見積り方法です。
このとき、「普通では考えられない料金を提示された」と話してくださるお客様は多いです。そのような方に話を聞いてみると、2時間程度で終わる簡単な作業でも、見積り時に「50万円を提示された」と話してくださった方がいました。
その方は、「とてもではないが支払うことができない」と断ったそうです。しかしその業者は、そのお客様に断られた直後に「それでは、20万円ではどうですか?」 と、いきなり半額以下の料金を提示してきたそうです。
その方は、「最初に断った手前、再度断ることを言い出しにくかった」と話してくださいました。しかし、20万円でも完全に予算オーバーだったため、勇気を出して断ったそうです。
このように、ドア・イン・ザ・フェイスは悪用しようと思えば、簡単に悪用することができます。明らかにおかしな要求を受けたときは、冷静に対処することが重要です。
ドア・イン・ザ・フェイスは、相手にイエスをもらうためにとても有効な手法です。まず最初に、過大な要求を相手に提示し、断られた後に本命である小さな要求を提示することにより、相手に承諾をもらうテクニックです。
このとき注意しなければならないことは、過大すぎる要求をしないことです。このことに十分に注意し、実家の片付けを行うきっかけとなるように利用してください。
→ 【画像あり】実際にあった実家の片付け・ゴミ屋敷清掃の事例を見てみる